湧き出す気持ち




久しぶりの柳×九条です。
最終巻の最後にあった九条の妊娠。妊娠のきっかけ、を書いてみました。

結婚後、設定は都合良い感じになっていますが、柳は関連会社で修業中、美琴は会計士として働いています。









 もう五日くらいになるだろうか、お互い、誰もいない部屋に帰り、誰もいない部屋からそれぞれの仕事に出かけていた。


 美琴は見上げた先に明かりを見つけ、急いでマンションのエントランスに入っていった。
 玄関を入ってリビングのドアノブに手をかけようとしたところ、向こうから開けられ、美琴は一瞬驚いた。が、前に立つ尚人を見て、穏やかな満面の笑みを浮かべた。
「おかえり、美琴。」
「ただいっ」
 抱きしめられ、美琴の言葉が切れた。
 尚人が柔らかく、また、時折、存在を確かめるかのように強く、抱きしめる。
 美琴は尚人の背中にそっと腕をまわした。
「・・・おまえ、ちゃんと飯食ってたか?」
 そう言って美琴の背中から腰の辺りを丁寧に触る。
 久しぶりの感覚に、美琴は自分の中に熱い気持ちが灯るのを感じた。
「食べてたよ?」
「なんか、痩せた気がする」
「ただ忙しかったからかしら。今日なんて、新規のお客さまのところに行ってね、そのままご飯をたくさんごちそうになってしまったんだから」
「え、男かよ、なんだよ、それ」
 尚人は少し不満気味に言った。
「その会社である程度の管理はできているし、試算表を出してみると儲かっているんだけど、社長さんにその実感がないの」
「ふーぅん」
「キャッシュフローを見て確認しましょってことになって、その流れで? ご飯?」
「どういう流れだよっ」
「尚人・・・ごめんね、寂しい思いをさせてしまった」
「おっ、おまえは寂しくなかったのかよっ」
「寂しかったよ? だから、電気がついているのが見えて、走ってきたんだから」
 尚人がなんとなく満足気になっているのを、美琴は感じた。
「私たちは、ちゃんと繋がってるよ? 切れないよ?」
「・・・欲しい」
 耳元に響いたストレートな言い方に、美琴の胸が高鳴った。
「うん・・・」
 嬉しいに決まってる。
 自分だって求めていたこと。
 美琴は、尚人の背中にまわしている腕に力をこめた。

 fin



<あとがき>
 そうして妊娠するのです。

 最終巻出てからどれくらい経ってるんだ!ですが、やっと一つ書けました、、、

 タイトル付けがうまくできないorz



2017/02/01




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