(4)
ゲームを終えたときには、二人の距離が縮まっていた。
話でもせぬか、と島田が誘い、近くの喫茶店に入った。
「そなた、いつからやっておるのだ?」
「2年くらい前でしょうか」
「誰に教えを乞うたのだ?」
「あそこの店長さんに」
「ほぉ・・・」
島田はあごに手をやった。
「きっかけは?」
美弥が話を始めた。
それから二人はさまざまなことを話し、話しているうちに会話に楽しさを感じ、そして感性が似ていることに互いに気づいてゆくのだった。
ふと、島田が時計を見た。
「もう、遅いな。澤田殿は明日も早いであろう?」
「はい・・・」
澤田は、もう少し島田といたいと思ったが、そう言い出せるわけではなかった。ただ、無意識に、動きが鈍くなっていた。進んでゆく時間に逆らうかのように。
澤田の顔が陰る様を、島田は捉えていた。仕事中にも、似たような陰りを見たことがあると思った。堂々としていそうで実は自信がない様子を見せられているようで、その部分を、上司としてではなく男として支えたいという気持ちが生じている自分自身に、島田は戸惑ってもいた。
その戸惑いは島田を無口にさせた。
喫茶店を出た二人は、無言で歩いていた。
ふいに、島田は澤田の腕をつかみ、その体を抱き寄せた。
「そなたを帰したくはなくなった」
澤田は、瞠目した。
島田の手が微かに震えているのを感じ、島田の背中に腕をまわした。
「澤田殿・・・」
「島田部長・・・」
島田は右手でほおをそっとなでると、唇を重ねた。
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