二人生活
銀狐が、あたしの命を狙っていた。
理由は、あたしがリョウの恋人だから。
恋人を殺されたくなければ、恋人を守りつつ自分と勝負しろ(=敗れろ)、というのが銀狐の言い分。
勘違いはなはだしいヤツだなぁ、とリョウにはあたしを守る気配はない。
あたしも思う。
銀狐は勘違いしている、と。
銀狐が、恋人に見てくれたことは素直に嬉しい。
でもリョウは、あたしのことはまだ子供だと思っている、と思う。あたしがリョウと一緒にいられるのは、たぶん、リョウのかつての相棒で、殺された「お兄ちゃんの妹だから」・・・。
あたしは、リビングで本棚の整理をしていた。
「美弥」
「あれ、銃の手入れは終わったの?」
「オレと一発する?」
「え」
力が抜け、持っていた本を全て、落とした。
「い、今、なんて・・・」
「つまりもっこりな関係になるか?」
-----ふっ、真っ赤な顔しやがって。
「そういう関係になっても、おかしくないよなっ」
リョウがあたしの方に腕を伸ばした瞬間、思わず、片足が後ずさった。
腕をしっかりつかまれ、あたしは金縛りにあったみたいに、動けない。
「リョ、リョウ・・・?」
か、か、か、からかわれてるぅ・・・???
「・・・なあんちゃって。おまえはオレがもっこりしない唯一の女だもんな。」
-----ま、そんなのはいつまで持つかわからんけどな。
それは、あたしは自慢できることなのだろうか?
「銀狐が狙っていることは忘れていいぞー。始末はオレがつけとくから。」
銀狐に狙われていることなんて、どうでもいいと思った。
「あー、メシだ、メシッ。腹へったぞー。メシできるまで寝てっからな!」
ったく、と言って頭をかきながら、リョウはリビングを出ていった。
あたしに女っぷりが足りないんだな、たぶん。
いつかリョウが、あたしを「女」としてみてくれる日なんて、くるんだろうか?
一人ぼっちになったあたしを迎え入れてくれたリョウと生活を始めて、3年めを迎えた。
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