癒す!








 美弥の顔をじっと見ながらあごをさすっていたカンベエは、美弥の腕をとって引き寄せると、頭を胸に押し付けた。

 「カ、カンベエ様っ?!」



 ふわり。



 -----いけないっ・・・。

 頭に置かれた手のぬくもりで枷が外れそうになるのを、美弥はこらえた。


 白い装束を着た大きな体は、美弥を包んだ。
 カンベエのにおいと肌のぬくもりとが、美弥の笑顔の下にある枷を外そうとする。


 「美弥、久しいな」

 カンベエの優しい声が、美弥の身体に心地よい。
 美弥は何か声に出そうとするが、出せば自身の弱い部分のみが流れ出てしまう気がして、何も言えないでいた。


 「美弥。なぜ我慢を強いている?」

 カンベエにそう言われ、はっとして美弥は顔を上げた。

 -----あぁ、だめ・・・。

 カンベエと目を合わせた美弥の目にはみるみる涙がたまり、今にもあふれそうだった。


 「お主の笑顔に、曇りがある」

 美弥が築いている砦が、崩れた。





 カンベエがいない間に美弥の周りで起きていることを、カンベエはもちろん知らない。しかし久しぶりに会うと、美弥が外に出すことができない、外に出してはいけない感情を抱えすぎていることはわかる。
 すると、カンベエは強くなる。
 常に強く在る必要はない、と美弥を抱きしめる。
 日々明るく、強く在ることを望まれていても、気を緩める場所も必要だ、と美弥の頭をなでる。



 「・・・・とき・・・も・ある・・・のぉ」

 しゃくりあげる美弥の背を、カンベエはさする。

 「ふりま・・・・・い・ぁ・・」

 美弥の頭を何度もなでる。










 ひとしきり泣き、美弥は思う。





 私を受け止めてくれた強い人は、では誰が受け止めるのか、と・・・。





 「カンベエ様」

 「なにかな?」

 美弥は、華奢な手でカンベエの頬を包み、目をじっと見つめた。

 「お久しゅうございます」

 美弥の本当の笑顔に、カンベエは癒されるのだった。









 精神的に痛い状況、それをストレスというのかもしれないけれど、人はどうやって解消するのでしょう。ストレスの解消の仕方、忘れました。
 ということで、おっさま、登場。
 このところ(時間がないとか、そういう理由ではなく)妄想を書けないでいたので、書けて嬉しい。
 最後、くちづけさせたかったな・・・。
 書いていて思ったけれど、常に誰かを癒せるように在りたいもの。



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