通じ合い
土曜日の部活後、僕は海堂を家に誘う。部活で得たデータ更新をさっさと片付けたいところだけど、両親がいないわけで、海堂とゆっくり過ごしたいから。
冷たいものを持って部屋に入ると、海堂はベッドに座っていた。適当なところに座って待ってて、とは言ったが・・・挑発しているのかい、海堂?
「はい、海堂」
「ありがとうございます」
そう言って、海堂は早速グラスを手にした。
僕は、部屋がちょっときれいになっていることに気づいた。
「海堂、洋服をたたんでくれたんだね」
「先輩、たたむこと覚えた方がいいッスよ・・・」
「ふむ・・・海堂がいるから、いいだろう?」
赤くなってうつむく海堂はかわいかった。
「海堂。こっちにおいで」
手招きすると、海堂は僕の隣に座った。
右手で海堂の左手をとり、五指を絡ませる。ぴったりとはまるところで、強くにぎりしめた。
海堂と一緒にいると落ち着いたが、そろそろこの気持ちには限界があり、海堂への熱い想いはふくらんだ。
そう、僕は海堂と、やりたい。
女性とすらそういう経験がないから、海堂を喜ばせる自信なんてないけど、それは少しずつ歩めば、そして二人の間の溝のようなものがなくなっていくといいと思っている。
「海堂・・・」
何か行動にうつしたいと、自分で構えてしまったせいか僕の心臓はドキドキしていた。こんな胸の高鳴り、想像したことがない。
「なんスか?」
海堂の優しい声が心地良く、体が震えた。
僕は海堂の腕をつかんで立ち上がると、抱きしめた。
「せ、先輩っ・・・?!」
「ごめん、しばらくこうさせて」
急に抱きしめたせいで驚いていた海堂の体から、少しずつ緊張が抜けていくのがわかった。すると海堂は、僕の背に腕をまわし、そっと抱きかえしてくれた。
密着度が高まり、海堂の心臓の音を感じていた。
「ありがとう、海堂・・・」
「ナンか・・・嬉しいッス、こうやって、先輩と・・・だ・・・だ・・・だ●★♯α%は」
「何、海堂? 聞こえなかったな」
僕は海堂の頭をなでた。
「海堂、もう一度言って? ちゃんと海堂から聞きたいな」
「・・・せっ、先輩と、だ・・・だっ、抱き、あってるの・・・落ち、着く・・・ッス」
「海堂っ!」
僕はさらに強く、海堂を抱きしめた。
海堂も僕と同じ気持ちでいることが、嬉しかった。
うん、でも、こんな感じだと、キスすらしていない僕ら、その先にはなかなか進めないね。
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