好敵手--ライバル--








「美弥、跡部と映画見に行くん?」
「うん」
「やめとき」
「なんでですか?」
「なんでアイツと行くねん?」
「だって、あの部長が誘ってきたんですよ? わたしに見せたいのかなーとか、何か意図があるんだろーなーとか思うと、そういう期待には応えたいじゃないですか?」
「美弥。じゃあ、ヤツが告ってきたらそれに応えるんか?」
「えっ? そんなことはないですよー」
「美弥、全然わかっとらんなー」
「じゃあ、先輩、一緒に行きます?」
「なんで跡部と美弥が映画を見に行くとこに保護者同然ついて行かなあかんのや?」
「3人で見に行くってことですよ」
「だからぁー、その映画をオレと美弥とで見に行ったらいいねん」
「部長は?」
「ヤツのことなん知るか!」
「先輩と部長が一緒に見に行けばいいんじゃないですか? で、その後で先輩とわたしが一緒に見に行くとか?」
「アホらし・・・わかったわ、もう、行ってこい」
「あ、先輩、今、投げやりになった」
「なんでそういうとこは敏感やねん?・・・行ってき、待っとるねん」
「うん!」

-----

 土曜日、跡部と映画を見た美弥は、その足で忍足の家に行った。


「いらっしゃい。っちゅーか、おかえり、やな」
「ただいまです」
「随分と早かったな」
「だって映画観て、お茶しただけですよ」
「だけ、ねぇ・・・。どこでお茶したん?」
「え? お茶の方・・・ですか・・・? 銀座の会員制ティールームですよ。すごくおいしいお茶で、また行きたいっ!」
「(ザ・ティールームに連れてったんかいな? 美弥の趣味を把握してるな、アイツ)」
「映画はすっごくおもしろかったんですよ。でも、部長が何であの映画をわたしに見せたのかは、今イチわからないんです。明日、部活の前にでも聞いてみようかな」
「やめとき」
「ん?」
「美弥が自分で考えてみ。そういうのは、自分で考えた方が身になるねん」
「そっか」
「そっ。(跡部がオレに当て付けるために美弥を誘ったのなんか、ミエミエやわ!)」
「うん」


「美弥、こっち来ぃ」


 ソファーに手招きし、忍足は両足の間に美弥を座らせた。
 ようやく手元に戻ってきた恋人を、愛しむために。

-----

 翌朝。


 「跡部ー」
 「ナンだよ?」
 「跡部のおかげで昨日は燃えたったでー。おぉきに」
 「フンッ、俺様に感謝するんだな!」





月刊ナカジン表紙へ戻る

妄想ページのトップへ