SWEET NIGHT
「ま、待って、直江さんっ!」
美弥がジャケットのすそをつかみかけた瞬間、雷がとどろいた。
「キャーッ!!!!」
「美弥さんっ?!」
声に驚いて振り返った直江は、耳をふさぎ、その場にしゃがみこむ美弥を見た。
空を仰ぎ見て、美弥が雷が苦手であることを理解した。
「ここにじっとしていては危険です」
そう言って美弥を抱きかかえ、直江は走った。
稲妻が光るたびに体をこわばらせる美弥に、早く貴女を安心させてあげたいと、思っていた。
キーを使うのももどかしく、念動力でオートロックを解除した。
荒々しく扉を開け、マンションの自室に入った直江は、室内が濡れるのもかまわず、美弥をベッドルームへ運び込んだ。
まだ微かに震え、直江の腕をしっかりとつかむ美弥の手をゆっくりとほどく。
ベッドに座り、濡れた髪や肌を優しくぬぐう。
「美弥さん。何か温かいものを用意してきますから、これに着替えていてください」
美弥にはかなり大きい自身のシャツを持たせた。
キッチンに行こうと立ちあがった直江の腕を、美弥はつかんだ。
「お願い。まだ、一人にしないで」
直江は、ベッドに座り、美弥の頬をさすった。
「直江さん・・・すごい濡れてる・・・」
そう言って、美弥はタオルを手にした。
「大丈夫ですよ、自分でふきますから」
「拭かせて・・・」
「先に着替えないと。・・・ほら、体が冷えてきています。このままでは風邪をひきますよ。私も着替えてきますから」
「暖めて、直江さん・・・」
「美弥さん・・・」
美弥の頬にはりつく濡れた髪の毛をすきやり、くちづけをした。
美弥は、直江を離さないと言わんばかりに、雷の恐怖を打ち払おうとするかのように、唇を求めた。
「美弥さん・・・貴女が愛しい・・・」
美弥のシャツのボタンに、直江の手がかかる-----。
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