痴話喧嘩








 「・・・長太郎がこのデケェ家で一人で長い時間を過ごしてきたかと思うと、その埋まらない何かを満たしたいとか、思うわけよ。別にっ、同情してるわけじゃねぇーゾッ。前向いて歩いていくのに、誰かと一緒の方がいいだろっ? そりゃさ、オレ、だろう? オレと一緒だと、これまでの風景と違うモンが見えるぜっ、きっと。・・・オレ的には、オマエがいねぇ生活なんて、もうありえねぇわけよっ」

 勢いでそう言って、宍戸はたばこの灰を落とす。

 「宍戸サン・・・」

 長太郎は宍戸を強く抱きしめ、耳元でささやく。

 「ということは、週末は女の人とデートなんですね」
 「ちょっ・・・!」

 見抜かれている、と宍戸は焦った。
 ほだされたように見えていただけだった。

 「宍戸さんっ、オレが居ながらっ・・・!」
 「ソ、ソレとコレとは別だろーがよっ」

 長太郎の頭を抱き寄せ、口付けた。
 それは、長太郎の唇から嫉妬心を吸い取る、甘い口付けだった。


 そうして、やはり長太郎はほだされた。





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