EGOIST








 「しばらく、こうさせてください・・・」
 直江はそう言って、美弥を抱きしめる腕に力を入れた。








 「今日のワンピース、素敵ですね」

 耳元でささやかれた美弥は、瞬時に顔を赤くした。大きく開いた胸元までが、赤い。

-----私の想う人は、ご自分が褒められたりすることに、戸惑いをみせる。

 「美弥さん・・・エゴイストの香りがしますね」

 「えっ・・・あっ、やっ、なんでわかるのっ」

 美弥は恥ずかしさのあまり、うつ向いた。

-----私と同じ香りですから。わかりますよ、美弥さん。

 美弥がエゴイストをつけるのは、直江の影響だ。直江が歩いたときに空気の間を伝ってくる香り、直江から抱きしめられた時に体が包まれる香り、それらを常に感じていたいと思ったのだ。
 そうして日々直江を感じることは、美弥の心の内での密かな楽しみとしていたため、直江本人から指摘されることは、秘密が暴かれたような、心の中を見透かされたような心地になるのだった。





 直江は、自身の胸に手を置いて、言う。

 「私は、ここにいますよ」

 「直江・・・」

 直江は、顔をあげた美弥の右耳に触れ、そのままあごまですべらせると、美弥の唇に自らのそれを落とした。



-----私の全てをあなたに差し上げます。



 美弥の腰を片腕で支えながら、魂を送り込むような濃厚なキスをした。





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